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桜が散り、長かった梅雨が明け、季節は夏を迎えた。額に汗を浮かべながら、優は屋台で買ってあげたラムネをのむ。私は優のずれた野球帽を直しながら、優の手を握り直す。
左手に冷えたジュースを持ちながら、私たちはとある場所を目指していた。
「優、転ばないでよー」
「大丈夫!」
元気に走っていく優の後ろ姿を見つめながら、私はその後を追う。通い慣れた家のインターフォンを押す。中から現れたのは蓮のお母さん。
「あら! 久しぶりね、海愛ちゃん。優くん先に来てるわよ」
「すみません……あ、これさっき屋台で買ったんですけど、お義母さんこれ好きでしたよね? よかったらどうぞ」
「あーそっか、今日は夏祭りだもんね。ありがとう。さ、あがって! 暑かったでしょう」
「お邪魔します」
お義母さんはこの六年で白髪が目立つようになった。それは息子を失った悲しみからくる多大なストレスが原因だと思われた。
私は蓮の死後も、時々こうして孫の優を見せにこの家に遊びに来ていた。私を本当の娘のように可愛がってくれる優しいお義母さんに、私はどうしても伝えなくてはいけないことがあった。
隣の部屋で優を遊ばせながら、私はお義母さんに本題を持ち出した。