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 雲一つない青空が広がったその日、私は優の小さな手を引き、来年、優が歩く通学路を歩いていた。

 天気のいい日はこうして散歩をするのが日課だった。優は日に日にたくましく成長している。その姿が今は亡き恋人に似てきている現実は、私の心を揺さぶる。ふとした瞬間の顏、仕草が私の中にいる彼を呼び起こす。



 私は決断を迫られていた。それは、神谷くんとの関係。神谷くんは私を責めることなく長い間待ってくれていた。彼に告白されて五年、私は未だ答えを出せずにいた。この世を去った恋人のことが忘れられないと言った私に、神谷くんは「それでもいい」と言ってくれた。優のことを一番に考えれば、選ぶべき答えは決まっているというのに。

 結局は自分のことを一番に考えている。私はそんな自分自身が大嫌いだった。





「ねえ、優」





「なあに?」





 優は散歩の途中で買ってあげたアイスを食べながら首を傾げた。





「今日ね、神谷おじさん、お仕事で遅くなるから来れないんだって」





「えー、おじさんとゲームするって約束してたのに!」





「おじさん、ごめんねって言ってたよ」





「しょうがないなあ」





 優はわざとらしく溜息をつき、残りのアイスを一口で食べた。





「優」





 私はそんな優に意を決して聞いた。





「優は、神谷おじさんがお父さんになったら嬉しい?」