目を覚ました僕が最初に見たのは目を赤く腫らした海愛の姿。後に姿を現した田辺先生に海愛の様子を尋ねると、彼女は泣き出してしまった。そんな海愛をなだめようと、僕は海愛の手を握って離さなかった。
容態が安定したこともあり、僕は一時的に海愛と二人きりの時間を持つことができた。
「海愛……僕が死んだらさ「死ぬとか簡単に言わないでよ、バカ!」
僕の声は海愛の怒声にかき消されてしまった。
突然の大声に、病室に入ろうとした神谷は扉の前で足を止めた。
「どうして私のことばっかりなの? 少しは自分の心配もしなさいよ!」
海愛に本気で怒られたのは初めてで、困惑が隠せない。
「み……海愛?」
「死んだら私のことも優のことも守れなくなるんだよ? 蓮のしたいことだってなにもできなくなっちゃうんだよ! 私、そんな弱気な蓮は嫌い!」
海愛の言葉に僕は体を強張らせる。
「ごめん……」
「謝んないでよ!」
「ごめん」
「ほらまた!」
「海愛!」
僕は残された力で海愛を抱き締めた。