* * *
僕は意識を取り戻した。僕はまだ、生きている。
ああ、隣で海愛が泣いている。
眠っている間、僕は夢を見ていた。それは今までのような、真っ白な空間に立っているものではない。鮮やかに彩られた世界で、少年は僕に向かって言った。
『キミは、彼女に殺される』
『違うよ、僕。弱虫だった僕。僕は……自分で選んだんだ』
『なぜ?』
不思議そうに首を傾げる少年に僕は答えた。
『彼女を愛しているからさ』
咄嗟に、少年と今後会うことはないのだろうと思った。この夢を見るのも最後になる気がした。最後に見た少年の表情は、晴れやかな笑顔だった。