「海愛……?」





 今まで全く反応のなかった蓮の瞳が動き、私の名前を呼んだ。その事実がどうしようもなく嬉しかった。





「蓮!」





 ナースコールを連打しながら、私は蓮に抱き着いて泣いた。





「蓮くんの意識が戻ったって、本当かい!」





「はい!」





「田辺……先生」





 蓮は掠れた声で田辺先生の名前を呼んだ。

 蓮はなにかを訴えようとしているように見えた。

 蓮の言葉を聞いた田辺先生は、私に笑顔を見せて言った。





「海愛さん」





「はい?」





「彼は君を心配しているよ。彼女は大丈夫ですか、泣いていませんかって」





 涙があふれ、止まらない。



 なによ、そうやっていつも私のことばかり。私、こんなに愛されてた。





「蓮……私なら、平気だから……私も優ゆうも、元気だよ」





 優ゆう。私と蓮の息子。

 私の言葉に蓮は安堵の表情を浮かべた。





「よかった……」





 蓮は私の手を決して放そうとはしなかった。