* * *
それから半年後、蓮は昏睡状態になった。蓮は、私の呼びかけに反応する気配も見せず、眠り続けている。
最期に、もう一度声が聞きたい。
私は不確かな願いを叶えるため、蓮の病室に泊まり込んでいた。
「海愛ちゃん。俺ちょっと仕事を片づけてくるから席外すね。なにかあったらナースコール押してね」
「うん。ありがとう」
蓮の様子を見に来た神谷くんは私にそう告げると、病室を後にした。無機質な音が響く病室で、私は蓮の寝顔を見つめていた。
「ねえ、蓮……最期に一度だけでいいから、私を見て」
反応がない。
「なにも言ってくれないのね」
何度繰り返しても結果は同じだった。
蓮、私待ってるんだよ?アナタがもう一度私の名前を呼んでくれることを。ずっと待ってる。
「最期は笑ってサヨナラしようって……約束したじゃない」
だから、目を開けて。
私は蓮の頬に触れる。柔らかくて、温かい頬。生きている証拠。
その日の夕方、蓮は意識を取り戻した。