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澄み切った青空が広がり、猛暑を記録した八月十日。午前九時五十八分。この世界に新たな命が誕生した。大きな産声を上げ、この世に生まれてきた男の子。僕の息子。
海愛は酸欠で意識が朦朧としながら、たった一人で出産に挑んだ。
「やっと、会えたね……」
腕に収まる小さな息子を愛おしそうに見つめ、海愛は分娩台の上で泣いていた。
出産の際、出血が酷かった海愛は、体調が戻るまで一週間入院することになった。入院期間が過ぎ、体調が回復した海愛は息子を連れて僕の元を訪れた。
「蓮、気分はどう?」
「お前こそ……大丈夫なのか」
「大丈夫よ……私も、この子も、元気よ」
この日、初めて我が子を目にした僕は、想像以上に小さな命に目を丸くした。
「一人で、よく頑張ったな……ありがとう、海愛」
「らしくない」そう言って笑う海愛に僕は苦笑した。
「抱いてみる?」
「え、いや、僕は……」
病室の片隅で優しい眼差しを向けていた看護師に手伝ってもらい、僕は我が子を腕に抱くことができた。首が座らない赤ん坊に恐怖を覚えながらも、僕は初めて赤ん坊を抱いた。
腕の中で息子は穏やかな表情で寝息をたてていた。