「海愛のこと、好きなんじゃないのか?」





「それは……」





「一緒になってくれ。なんて、お前の人生を縛るつもりはない。ただ、時々でいいから、海愛のことを気にかけてやってほしいんだ。頼む、神谷」





 僕は神谷に深々と頭を下げた。

 もうプライドなんていらない。海愛のためにできることはなんだってする。それが、僕に残された最期の時間の使い方。



 頭を下げる僕に、神谷はさらに青くなった。





「お前が望むなら、俺は従う。だから、頭を上げてくれよ。頼むから」





「決めるのは神谷、お前だ。僕に遠慮なんていらないから……とにかく、僕の気持ちは伝えたぞ」





「……」





 黙り込んでしまった神谷。僕はベッドの横にある戸棚から一枚のDVDを取り出し、神谷に手渡した。





「これ、お前に預けておく」





「なにこれ」





「ビデオレター、かな。お前が海愛を選んでくれたら、あいつに見せてやってほしい」





「櫻井……」





 神谷は手渡されたDVDを抱えてうつむいてしまった。

 点滴の管。心電図のパッチ。栄養補給のためのチューブなど、無数の管が僕の体に伸びていた。痩せ細った僕を、神谷は決して見ようとはしなかった。





「頼んだぞ」





「……分かった」





 神谷の返答に、僕は苦笑した。