*   *   *





 僕は海愛の肩を抱きながら、幸せな時間を感じていた。温かい体、生きているとは、こんなにも素晴らしい。





「で、話って?」





 そういえば、と切り出して、僕は首を傾げた。

 昨夜、電話越しに震える声色で僕は海愛の「会いたい」を聞いた。

 そんな経緯で海愛の部屋に招かれたのだが、様子がおかしい。海愛は「話がある」という言葉を最後になにも言わなくなってしまった。

 目も合わせてくれない。少し前の自分を見ているようだった。





「蓮……私のこと、好き?」





 突然口を開いた海愛に、僕の心臓が跳ねる。





「好きだよ」





 僕の返答に海愛の緊張した表情が解ほぐれた。





「蓮、あのね」





「ん?」





 見上げた海愛の瞳は恐怖で強張っていた。

 僕の服の裾を握る海愛。先ほどから様子がおかしい海愛に首を傾げる。





「お前、今日おかしいぞ。どうしたんだよ」





 海愛の額にはうっすら汗が浮かんでいた。顔色も悪い気がする。

 体調が悪いのかと聞いてみたが「そうじゃない」と海愛は首を横に振った。