「努力なしでいい点が取れるはずないだろ? 僕は天才じゃないんだから」
「分かってるけど……なんていうか、お前に秀才のイメージがないから不思議でさ」
「は?」
「いつも授業の途中で帰るし、イメージとしては……不良」
「ふっ」
これには思わず吹き出してしまった。
実際、死に物狂いで勉強しているつもりはない。もともと勉強と相性が良かったと言ってしまえばそれまでだが、努力を怠った覚えは毛頭ない。
激しい運動、心拍数が上がる行動は禁止。病のせいで禁止になったものの例を挙あげればキリがない。つまり僕にとって集中できる、そして高利益な行動が勉強だった。それだけ。勉強は嫌いではなかったため、それほど苦にはならなかった。
「なんだよ、笑うなよ」
「悪いな。僕がそんなイメージを持たれていたなんて知って、おかしくてさ」
僕は自分を器用だと思っていた。器用に毎日やり過ごし、生活に困らない程度に友達もつくった。友達がいないと知ると、母が悲しむだろうから。
全て、上辺だけのつくり物だった。
「今度、オレに勉強教えてくれ!」
「宿題写させてくれ、の間違いだろ?」
「うっ……それは」
クラスメイトの真澄那音ますみなおとはバツが悪そうに言葉を詰まらせた。