「君は……櫻井くんを知っているのかい?」





「一応、同じ大学の出身です」





 俺の言葉に田辺先生は目を輝かせた。





「神谷くんは櫻井くんの友達なのかい! 世の中とは本当に不思議なものだね」





 俺があの櫻井蓮と友達? そんな関係、こっちから願い下げだ。





「え、いや、あの……友達じゃないです」





「私は心配していたんだよ。あの子は昔から人を遠ざけてばかりだったから……でもそうか、神谷くんが友達なのか」





 田辺先生に俺の言葉は届いていないようだ。今度はもっと大きな声で言った。





「先生! 確かに俺は櫻井蓮と知り合いですけど!」





「じゃあ君は、彼の病気のことも知っているのかい?」





「病気、ですか?」





 なにを言われたのか、理解するのに時間がかかった。

 俺の反応に田辺先生は「しまった」という顔で口を閉じた。そして諦めたようにパイプ椅子に深く腰かけた。少しの沈黙の後、田辺先生は重い口を開いた。