*   *   *







 仕事を終えた夕方、神谷陸は田辺先生のいる休憩室の扉をノックした。





「どうぞ」





「失礼します」





 姿を現した俺に田辺先生は目を細めた。

 俺は先生に頭を下げ、休憩室の中に入る。





「おお、神谷くん。お疲れ」





「お疲れさまです。先生に、お聞きしたいことがあります」





「なんだい? とりあえず、座ったら?」





 暗く険しい表情を浮かべる俺に田辺先生はお茶を啜りながら言う。俺は首を横に振った。





「いえ、すぐ済むのでこのままで大丈夫です」





「そうか……で、聞きたいことって?」





 俺は眉間に皺を寄せ、口を開いた。





「先生は、いつもこの時間に櫻井蓮と会っていますよね。それはなぜですか?」





 田辺先生は冷めたお茶が入った紙コップを机に置き、まじまじと俺の顔を見る。分厚い眼鏡の奥の瞳は動揺で揺れていた。