「海愛、蓮くん! 久しぶり!」





「久しぶり。体は大丈夫なのか?」





 僕の言葉に智淮さんは「ああ」と気がつき、自分の腹を優しく撫でた。





「大丈夫だよ。逆に心配なのは那音かな」





 智淮さんはケラケラと笑いながら那音を見た。台所で珈琲を淹れながら那音はギクリと肩を跳ねさせた。





「な、なんだよ……」





「那音ったら、まだ赤ちゃんが男の子か女の子かも分かんないのに女の子だって決めつけて色々買ってくるんだもん。あれは笑った」





「那音くん、そんなことしたの?」





 智淮さんの話に海愛は吹き出した。

 那音は赤面しながら僕と海愛に珈琲を運んでくれた。そのまま那音は智淮さんの隣に腰を下ろす。





「智淮……あんまり言うなよ、恥ずかしい」





 智淮さんは気にせず笑っていた。

 那音の部屋は全体的に緑でまとめられていた。

 この部屋も、智淮さんの実家を手伝うようになったら引き払ってしまうらしい。

 当初の僕は那音に「学校を辞めて本当に後悔しないのか」を聞こうとしていた。どうやらその心配はいらなかったようだ。幸せそうな二人の姿に僕は言葉をのみ込んだ。