「……蓮くん」





 風が僕らの間を吹き抜ける。しばらく風を感じていると、彼女から声をかけられた。





「なに?」





「私の友達になってくれる?」





 彼女は僕を気にしながら、申しわけなさそうに苦笑いを浮かべた。

 僕は鈴葉のお願いに一言。





「うん」





 そう返事をした。





「ありがとう」





 彼女は嬉しそうに笑っていた。





「そういえば、手の怪我は大丈夫?」





「ああ」





 彼女は絆創膏が貼られた僕の拳を見つめ、悲しそうな顔をした。





「大丈夫だよ、そんなに痛くないから」





「本当に?」





「うん」





「そっか、よかった……」





 僕の言葉に安心したのか、彼女は微笑んだ。



 その瞬間、僕の胸がチクリと痛む。発作の痛みかと肝を冷やしたが、どうやら違うらしい。彼女の笑顔を見ると、胸が、呼吸が苦しくなる気がした。

 異変を悟さとられないよう、僕は平然を装った。原因は分からないまま。



 ただ一つ。確かだったのは、その日の僕らは勉強のことなどすっかり忘れていた。