「智淮の腹に、オレの子がいる」





「…………」





 言葉を失った。予想外の返答に、僕の思考は停止した。無言の僕に、那音は慌てる。





「おい、なにか言えよ。今さら軽蔑したとか、なしだからな?」





「いや、驚いただけ……智淮さんが妊娠したって、本当なのか?」





「一緒に病院行ってきたから間違いない。四か月だって」





 想像よりずっと穏やかな声色の那音に、僕は「そうか」と答え、ベッドへ倒れ込んだ。

 那音の決心を僕は素直に受け入れた。あいつは頑固だから、一度決めた決心を揺るがせたりしないだろう。





「那音」





「ん?」





「今度、海愛連れてお前らに会いに行ってもいいか?」





 素直に祝福しようと思う。僕らを引き合わせてくれた大切な友人たちの門出を、今度は僕らが祝福するんだ。





「おう、待ってる!」





 電話を切った後の僕は満ち足りた気持ちに包まれていた。後に話を聞いた海愛は、親友の吉報をまるで自分のことのように喜んでいた。