神谷と海愛の仲を知ってから、僕は海愛の目をまっすぐ見ることができなくなった。一緒にいる時間がツラい。そう思ったのは初めてのことだった。
僕は不安なのだ。海愛が僕から離れて行ってしまうのではないか。そう思うと、海愛と向き合って話すことができない。
うつむく僕を見て、海愛の父親は微笑みながら言った。
「前回は、頭ごなしに娘との関係を否定して悪かったね……あれから私も考えたんだ」
あの時とは違う、優しい顔つきに、まわり始めていた酔いが一気に醒めてしまった。
突然頭を下げた海愛の父親に、僕は目を丸くした。
「や、やめてください! 僕なんかに……頭を下げないでください」
僕はどうしようもなくなり、眉を下げた。
「蓮くん、私をお義父さんと呼んではくれないか」
「え……え!」
一瞬、なにを言われたのか理解できなかった。目の前で起きた現実が信じられない。
僕の上げた驚きの声に、視線が集まる。恥ずかしさで顔を真っ赤にする僕の肩を叩き、お義父さんは笑った。