「どうして俺を助けたんですか」
「君を助けたいと思ったから、それだけだよ」
「俺はあのまま死にたかったのに」
「君にはまだ明るい未来が待ってる」
「勝手に俺の人生を決めないでください。どうせ俺は一生、負け犬なんです」
全てが鬱陶しかった。遠くで聞こえる心電図の音も、なにもかも、命を連想させるものなど消えてしまえばいいのに。
点滴を引き抜こうとする俺の手を押さえ、田辺先生は言った。
「聞いてくれ。今、先生は君と同い年の男の子の主治医をしているんだけどね」
だからどうした。俺には関係ない。
「その子は生まれた時からいつ死んでもおかしくない状態なんだ。それでも懸命に生きてる。本当はツラいだろうに」
「……」
「医者失格だと思うけれど……私は死に立ち会う瞬間が怖くて仕方ない。もう、会えないのだと思うと泣いてしまう」
顔を上げた先には悲しそうに笑う田辺先生がいた。
「先生……?」