「私は、彼に十分愛されてますから」





「それって、君だけがそう感じてるんじゃないの?」





「は?」





「体目当てとか」





 それはあなたでしょう? どうして私がここまで言われなきゃいけないの?





「俺なら、君の全てを受け入れるよ」





 神谷さんは私の耳元で囁いた。唇が近づき、お互いの息が感じられる距離になった瞬間、私は身の危険を感じ、顔を背けた。

 神谷さんは酔っている。正気でない相手にまともな会話ができるはずがない。

 私は次第に冷静さを取り戻し、満面の笑みで言った。





「ありえませんから」





 そう言い残し、私は神谷さんを置いて街へと消えていった。