* * *
「蓮、どうしたの?」
「いや……」
数日後、僕の部屋へ海愛を呼んだものの、笑顔を向けることができなかった。
自分でも嫌というほど分かっている。今の僕は嫉妬にかられた醜い男だ。
僕は深呼吸をし、隣で心配そうな表情を浮かべる海愛を見つめた。そのまま彼女を優しく抱き締める。突然の行動に海愛の体は強張る。
「蓮?」
「ひとつ、聞いていい?」
「うん。なに?」
海愛は大きな瞳を不安げに動かしながら僕を見つめる。
「あのさ」
「ん?」
「この前、たまたま近くでのんでてさ。見たんだ……その、お前と神谷が……」
ハッキリ言うことができない。心のどこかで答えを否定したい自分がいる。
海愛はそんな僕の様子に呆れたように眉を下げて笑った。
「あーあれ? あれはメールでもう会わないって言ったじゃない」
「でも」
「蓮、絶対なにか誤解してるでしょ」
そう言って、海愛はあの夜の真実を話し始めた。