「じゃっ! 乾杯!」





 ガラスの擦れる音がして、生ビールが並々と注がれたジョッキが交わる。ネオン街の外れにある居酒屋で、僕と大志は足を止め、暖簾のれんを潜くぐった。慣れない場所に戸惑う僕を導くように、大志はどんどん先へ足を踏み入れる。

 数分も経てば、庶民的な空間にすっかり馴染む僕の姿があった。



 海愛は今頃、知らない男と食事をしているのだろう。

 酒を煽りながら、不安でなかなか酔えない僕。その横ではすでに二杯目の生ビールを注文する大志。



 海愛に会いたい。





「ん? 海愛? ああ、お前の彼女か」





 自分でも気がつかないうちに酔いが回っていたのだろう。心の声が自然と漏れていた事実に、僕は大志に愚痴をさらけ出すことを決めた。アルコールで気分が高揚していたこともあり、思ったままの感情を口にする。





「本当は、行かせたくなかったんだよ!」





 環境適応能力が高い大志は乱れる僕の姿を見つめながら話を聞いていた。そんな性格が、僕と仲良くなれた一因かもしれない。





「なんで行かせたの? 俺だったらそのまま押し倒して、行かないって約束するまで離さないけど? そんで歩けなくなるくらいには可愛がっちゃう」





「お前……見かけによらず独占欲強いんだな」





 平然と過激な言葉を発する大志に、僕は驚きの表情を浮かべた。