眉を下げる海愛の肩を抱き、僕は優しく言った。





「なあ、海愛」





「え、なに?」





 穢れを知らない海愛がとても愛しく、同時に不安を感じた。





「そういうのって普通、彼氏に言わないと思うんだけど」





 言い方を変えてしまえばわざわざ「浮気してきます」と自ら宣言しているようなものだ。

 本人にその気は全くないのだろうが、独占欲が強い人間に言わせてみれば、そういう解釈になってもおかしくない。

 僕の言葉に海愛は頬を赤く染めた。





「なに? 妬かせたかったの?」





「ち、違うよ!」





「誘ってるなら、喜んでお受けしますよ?」





 慌てる海愛の姿がとても可愛く、つい苛めたくなってしまう。これは、惚れたものの心理として正しいだろうか。





「ちょ……と、蓮!」





 僕は海愛の両手首をしっかり掴み、そのままソファへと押し倒す。ソファに縫いつけられた両手の感覚に、海愛は事態を把握して反射的に顔を背ける。耳まで赤くなりながら、海愛の呼吸は心拍数の上昇から微かに乱れていた。艶めかしい、汗ばんだ白い肌。クラリと色気に眩暈を起こしながら、僕は衝動のまま海愛の首筋に唇を近づける。