待ち合わせ場所は近所の公園だった。





「あ、智淮ちえ! おーい!」





「那音! こっちだよ!」





 那音は自分の彼女を見つけ、かけ寄っていく。僕も便乗するように後ろをついていく。

 女子と会話をしたことがないわけではないが、今までのそれは事務的な会話に過ぎず、実際経験があるのかと聞かれたら、ないと言うしかない。

 出会いを自みずから遮断してきた僕にとって、女子と休日に会うというのは大事件だった。

 使う用途がなさそうな参考書にチラリと目をやり、僕は肩を落とした。





「蓮、紹介する。彼女の森もり仲なか智淮ちえ。オレたちと同い年だよ」





 那音の紹介に合わせて、智淮さんはペコリと頭を下げた。





「よろしく、智淮です! ていうか那音! 蓮くんめちゃくちゃカッコいいじゃん」





 智淮さんの言葉に、僕は思わず視線を下げた。





「初めまして、櫻井蓮です」





 頭を下げ、そのまま黙り込む僕。機嫌が悪いわけではないが、こんな時どんな会話をすればいいのか分からなかった。

 しばらく黙り込んでいると、智淮さんが思い出したように声を上げた。





「あ! そうだ、今日は友達連れてきたんだ! えっと、どこ行ったかな……あ、いた!」





 智淮さんは辺りを見渡しながら友達を探した。見つけたその人は、噴水の近くで佇たたずんでいた。腰まである栗色の髪にワンピースがよく似合う。遠目でも彼女は美しかった。





「呼んでくるね!」





 智淮さんが友達を呼びに行ったのが約三十秒前。そして今、僕の目の前に広がっていた

 のは、信じられない現実だった。