「私、この人と一緒になる。いつか、絶対に」





 海愛は自分に言い聞かせるように、語尾を強調し、強い眼差しで父親を見つめた。

 僕は海愛の言葉に励まされ、深々と頭を下げた。





「体のことを隠していたのは謝ります。この先、長くは生きられないのも事実です。それでも僕は、生き延びてみせます。ずっとずっと生きて……海愛さんを幸せにします」





 不可能に近い、口だけの言葉。それでも僕は、自分自身に誓いを立てた。信じなければ、弱い心は今にも崩れ去ってしまいそうだったから。



 海愛の父親はしばらく黙り込み、溜息をつきながら立ち上がった。そのまま僕の横に立ち、とどめとばかりに言い放った。





「私はなにを言われようと娘が大切なんだよ。幼い頃から体が弱かった子だからなおさらね。今この場で、はいそうですか、と簡単に言うことはできない」





「お父さん!」





 娘の声にも反応せず、父親はそのままリビングを去って行った。結局、認めてもらうことはできなかった。

 重い空気が漂う空間で、最初に言葉を発したのは海愛だった。





「蓮、本当にごめんね」





 僕は優しく微笑みながら首を横に振った。





「僕こそ、ごめんな。でも、諦めないから」





 僕は自分に強く誓い、唇を噛み締めた。



 その後、海愛の母親と雨姫さんと話し合った僕は、その場で謝罪の言葉を述べた。二人は怒ることも、否定することもせず、ただ優しく微笑みながら首を縦に振ってくれた。

 それから僕と海愛の父親が言葉を交わすことはなく、なにも解決しないまま時間だけが過ぎていった。