「なにが?」
「男目線で見ても、お前は絶対モテるはずなんだよ。なのに女子と話しているところ見たことないし……お前もしかして童「興味ない」
反射的に那音の言葉を遮りながら、僕は溜息をつく。
もうすぐ死ぬ人間になにを言っているのだろうか。未練なんてものはない。面倒。ただ、全てのことにやる気がない。
「那音、今日は勉強しに行くつもりなんだろう? なんで手になにも持っていないんだ?」
那音は指でピースサインをつくって言った。
「オレに任せとけって!」
「任せられない。意味が分からない」
「酷い!」
他愛のない会話を続けながらも、確実に時計の針は時間を刻んでいく。再び時計に視線を向けた時、針は約束の時刻を示していた。
「あ、もうこんな時間か!」
「そろそろ出た方がいいんじゃないか」
立ち上がりながら一度大きく背伸びをする僕。パキパキと背骨を鳴らしながら着替えを済ませる。
「本当になにも持ってないんだな……」
「おう!」
「お前、なにしに行くんだよ」
「え? 親友として蓮の脱、童「それ以上言ったら親友やめるからな」
那音を睨みながら、僕は教科書の準備を始める。
準備が整ったところで那音に視線を向けると、目が合った。
「なんだよ」
「べっつにー? やっぱムカつくくらいイケメンだなーって思って!」
「気持ち悪いこと言うな。置いてくぞ」
「あっ! 待てよ!」
こんなに一人の人間と深く関わりを持ったのは初めてだ。