下級生よりほんの少しだけ早く実施された高校生最後のテストも終わり、僕は無事に高校を卒業することになった。

 長い冬を越え、ようやく蕾をつけ始めた桜並木の通学路を歩く僕と海愛。例年に比べ、卒業式の日は暖かくなった。



 今までを振り返ってみると、本当に色んなことがあった。瞬きが惜しくなるほど眩しい思い出たちが今も脳裏に鮮明に焼きついている。

 特に望みもなく、死を待つだけだった毎日が、今では大切だと思えるようになった。

 短命だと分かっていた人生に他人を巻き込みたくないと、自ら心に高い壁を築き上げていた過去。それが今は大切な仲間たちと痛みや悲しみ、喜びを共有する素晴らしさを知ったのだ。



 海愛に出会い、僕は沢山の忘れかけていた感情を思い出した。

 水を得た魚のように、僕の人生は光が射す方向へと確実に変わっていた。