「僕に、あと少しだけ時間を下さい」





 幸せを全身で感じて死にたい。それが浅はかな死に急ぐ行為だったとしても。

 僕の言葉に田辺先生はしばらく黙り、重い口を開いた。





「条件を出すよ」





「はい」





 僕は田辺先生の言葉をじっと聞いていた。





「定期健診にはこれからもきちんと来ること。それと、もし次倒れるようなことがあった時は、有無を言わさず入院してもらうからね」





 田辺先生は椅子に腰かけながら大きく溜息をついた。





「なにより自分の命が大切なんだからね」





「はい」





 僕は田辺先生の言葉にゆっくりと首を縦に振った。

 この命にあとどれほどの時間が残されているのか、それは誰にも分からない。



 だからこそ、精一杯にやり遂げたい。



 最初で最後の、君と僕の恋愛を。