「どうして海愛がここにいるんだ?」





 呆然とする僕を見て海愛は笑った。





「もー覚えてないの? ベッドに横になったまま眠っちゃったんだよ?」





「え?」





「覚えてない、か」





 呆れたように笑う海愛の横で僕は頭を抱える。必死に記憶を辿るが、どうしても思い出せない。

 ひとつだけ確かなことがある。ここは現実。海愛に触れられる現実。

 確信した瞬間、僕は感情のままに海愛を抱き寄せた。



 触れられる。それがたまらなく嬉しかった。





「海愛!」





「きゃっ! ど、どうしたの?」





 海愛は嬉しいような、困ったような表情を浮かべながら僕の胸を押した。





「蓮、苦しい」





 抱き締めた腕を緩めようとは思わなかった。

 霞む視界。ポタリと僕の頬を伝う涙。

 それが、海愛に見せる初めての弱さだった。





「え! ど、どうしたの? ……蓮?」