*   *   *





 夢を見た。現れた海愛は僕に優しく笑いかける。





「蓮、大好きよ」





「なんだよ、急に」





 抱き寄せようと僕は海愛に手を伸ばす。しかし、伸ばした両手は虚しく空を掻いた。





「え?」





 海愛は確かに僕の目に映っている。それなのに、触れることができない。





「蓮、こっちよ。ほら」





 僕は離れていく海愛の後ろ姿を必死に追った。ようやく捕まえたと思ったが、結果は何度試しても同じだった。





「海愛……どうして、どうしてなんだ」





 不安と焦りばかりが募っていく。



 海愛の姿が完全に消える。同時に僕は悪夢から覚醒した。目覚めと同時に空を掻く僕の両腕。見慣れた天井が目に入り、ここが自分の部屋なのだと知った。

 徐々に覚醒していく頭が、僕を心配そうに見つめる海愛の姿を捉えた。





「え?」





 状況がのみ込めないまま、僕はゆっくり体を起こした。