「え……は?」
突拍子のない言葉に無防備だった僕は思わずのんでいたジュースを吹き出しそうになった。噎むせながら聞き間違いかと那音に再度確認するが、返ってきた言葉に落胆した。
「今日会う女の子さ、すげー可愛いんだぜ? オレも写真でしか見たことないんだけど、写真であれはヤバい」
「ふーん」
「興味ないのかよ」
興味ない。他人と深い人間関係は好まない。まして、彼女なんてもってのほかだ。
浮かれている那音。これが正常な男子高校生の反応なのだとしたら、僕は異常なのだろう。
「あの長い栗色の髪に大きな瞳! しかも同学年とか本当、なんで彼氏がいないのか逆に不思議っつーか」
「那音、お前彼女いるだろ。いいのかよ。そんなに他の子のことばっかりで」
「男は可愛い女の子には夢を見るもんなんだよ!」
途端に正座を崩し、胡坐あぐらをかきながら那音はフンッと鼻を鳴らした。
「それ、彼女に言ってやろうか」
その言葉に那音は急に顔色を変えた。
「ちょ、やめてマジで! つーかさぁ、お前もマジでもったいねーよなぁ」
向けられた那音の視線に僕は無意識に体を反らせる。凝視されるのは、あまりいい気分ではない。
「なにが?」
「男目線で見ても、お前は絶対モテるはずなんだよ。なのに女子と話しているところ見たことないし……お前もしかして童「興味ない」
反射的に那音の言葉を遮りながら、僕は溜息をつく。
もうすぐ死ぬ人間になにを言っているのだろうか。未練なんてものはない。面倒。ただ、全てのことにやる気がない。