「蓮は、怖くないの?」





「怖い?」





 海愛の言葉に首を傾げた。海愛は僕の服の裾すそに縋りつく。





「私、怖いの。莎奈匯さんのことがあったでしょう?」





「怖くないさ」





 僕は断言した。海愛は肩を震わせながら反論する。





「怖いなら、ちゃんと言ってよ」





「え?」





「怖いんでしょう?」





「海愛……?」





「死にたくないって言ってよ!」





「海愛、落ち着けよ。どうしたんだよ」





「本当は泣き崩れたいんでしょ!」





 海愛の言葉に僕は驚く。彼女の言葉には聞き覚えがあった。



 あの時の夢?



 時間が経過すると共に曖昧だった夢に色がついていっているような気がした。





「海愛、ごめんな。僕のせいでこんなに悩んでくれたんだよな。ツラい思いさせてごめん」





 僕は錯乱する海愛を抱き締めながら優しく言葉をかける。興奮状態だった海愛は次第に落ち着きを取り戻していった。