「あれ、違った?」





 首を傾げる母に、僕は呆れたように溜息をついた。





「母さん……」





「だって、ねぇ?」





「大丈夫だから、そういうこと心配しなくていいから早く飯食って準備したら?」





 僕の言葉に母は苦笑した。和やかな雰囲気のままクリスマスの夕飯は終わった。

 母が出かけた後、海愛は汚れた食器を片づけ始める。水仕事をする海愛の姿を見つめながら、僕は口を開いた。





「で、どうするの今日」





「え?」





 泡だらけの食器を手際よく水で洗い流しながら、海愛は首を傾げる。冷たそうに時折手をすり合わせる海愛を見かね、僕は冷水を温水に変えてやる。





「ありがとう」





「いいえ。それよりさっきの話、家には連絡入れたのか?」





 途端に赤く染まる海愛の頬。水音にかき消されそうな細い声で海愛は言った。





「と、友達の家に泊まるって言ってきた……」





「友達、ね」





 僕は苦笑いを浮かべる。

 嬉しいような、恥ずかしいような。まるで新生活を始めたばかりの恋人のような雰囲気に、僕は戸惑いながら頭を掻いた。