「エプロン、似合ってるわよ海愛ちゃん」





 母の指摘に、海愛は目を丸くする。





「あ、すみません! 勝手にお借りして……」





 慌てる海愛に、母は微笑む。台所まで聞こえる母と海愛の会話に笑ってしまった。





「娘ができたみたいね、うふふ」





 母の言葉に海愛はみるみる頬を赤らめた。





「いえ、そんな!」





「ああ、将来のお嫁さんだもんね! 私の娘同然か」





 照れて真っ赤になる海愛に、母は笑顔を見せ、買い物袋を持ち、台所に顔を見せる。     

 息子が台所に立っている珍しい状況に、母は笑った。





「あんた台所似合わないわね」





「うるさいな」





「包丁は? 危ないから刃物は使っちゃだめよ」





「分かってる」





 一度出血しようものならどうなってしまうか、僕はよく知っていた。母も最悪の事態に備え、常に気を張っている。

 漂う重い空気。海愛は状況を打開しようと、明るい声を発した。





「ご、ご飯にしましょうか!」