「母さん、夕飯を食べたら出かけるんだって」
「そうなの?」
「久しぶりに友達に会うって言ってたけど、僕たちに気を使ったんじゃないかな」
「え」
「つまり、今夜は二人きりってこと」
海愛の頬がみるみる赤く染まる。
夕日のせいだと誤魔化せないほど火照った頬を海愛は両手で覆った。
「蓮、お母さんに正直過ぎだよ……」
「こんな僕は嫌い?」
「……好き」
僕は海愛の手を取り、歩き出す。歩幅を彼女に合わせながら。
「私、幸せ過ぎて罰当らないかな」
「はは、なんだそれ」
寒さでかじかんだ手をしっかりと繋ぎ、僕は海愛の手を引いて、家路を急いだ。