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 十二月二十四日。

 僕らは近くのデパートでケーキを選んでいた。

 さすがに人が多い。離れないように手を繋ぎながら、僕らは足を進める。ケーキのディスプレイを見つめながら、海愛は「うーん」と唸り声を上げた。





「どっちにしようかな」





 生クリームの上に苺がふんだんに使われたケーキと生チョコでアイシングされたケーキを交互に見つめる海愛。

 その姿が可愛らしく、思わず微笑んでしまう。





「海愛が好きな方を選んでいいよ」





 僕は甘いものが苦手だった。しかし今日は特別だ。彼女の喜ぶ顔が見れるなら、好き嫌いなど、問題ではない。

 海愛は悩んだ末に一つのケーキを指差した。





「これ!」





「わかった、これでいいんだな」





「うん!」





 海愛が選んだのは生クリームがスポンジ生地に塗られ、沢山の苺があしらわれたケーキ。

 会計を済ませると、海愛は幸せそうな表情を浮かべていた。





「食べるの楽しみ!」





「ああ、言い忘れてたんだけど……」





「なに?」





 帰り道、突然立ち止まった僕に海愛は首を傾げた。大きな宝石のような茶色い瞳がきゅるりと僕を見つめる。