* * *
十二月二十四日。
僕らは近くのデパートでケーキを選んでいた。
さすがに人が多い。離れないように手を繋ぎながら、僕らは足を進める。ケーキのディスプレイを見つめながら、海愛は「うーん」と唸り声を上げた。
「どっちにしようかな」
生クリームの上に苺がふんだんに使われたケーキと生チョコでアイシングされたケーキを交互に見つめる海愛。
その姿が可愛らしく、思わず微笑んでしまう。
「海愛が好きな方を選んでいいよ」
僕は甘いものが苦手だった。しかし今日は特別だ。彼女の喜ぶ顔が見れるなら、好き嫌いなど、問題ではない。
海愛は悩んだ末に一つのケーキを指差した。
「これ!」
「わかった、これでいいんだな」
「うん!」
海愛が選んだのは生クリームがスポンジ生地に塗られ、沢山の苺があしらわれたケーキ。
会計を済ませると、海愛は幸せそうな表情を浮かべていた。
「食べるの楽しみ!」
「ああ、言い忘れてたんだけど……」
「なに?」
帰り道、突然立ち止まった僕に海愛は首を傾げた。大きな宝石のような茶色い瞳がきゅるりと僕を見つめる。