*   *   *





 その日の夕暮れ、莎奈匯は静かに息を引き取った。



 正午を過ぎた頃から彼女の意識は朦朧としていた。言葉が通じているのか分からなかったが、僕は莎奈匯が目覚めるたびに優しく声をかけた。莎奈匯の手をしっかりと握りながら、声をかけ続けた。正常だった心電図の動きが止まった瞬間から消えていく手の温もり。

 穏やかな最期だった。誰も声を荒げることなく、ただ目の前の死を見つめていた。





「莎奈匯、お前は幸せだったのか?」





 莎奈匯の最期は、穏やかな笑顔だった。