「初めまして。突然すみません」





「いえ……櫻井さん、ですか?」





「はい」





「私、莎奈匯の母です」





 莎奈匯の母親は僕に挨拶し、深々と頭を下げる。その行動に僕と海愛も慌てて頭を下げた。





「そちらのお譲さんは?」





「あ、鈴葉海愛と言います」





 莎奈匯の母親の表情は穏やかで、全ての覚悟ができているように見えた。

 僕は莎奈匯のベッドに歩み寄り、横たわる莎奈匯の近くに立った。

 ヒューヒューと不自然な呼吸音。体中に取りつけられた無数の管と点滴。

 見ているだけで痛々しい光景に目を背けたくなるが、僕はじっと真剣な表情で莎奈匯を見つめていた。

 人の気配に莎奈匯はゆっくりと瞳を開く。僕の姿に莎奈匯は驚いた表情を見せ、優しく微笑んだ。





「蓮……お見舞い、いらないって言ったのに」





「いいだろ、見舞いくらい許せ」





「そうだね、来ちゃったんだもんね」





 莎奈匯は苦笑した。そして僕の後ろにいた海愛に気がつき、「ああ」と声を上げた。





「アナタが海愛さん?」





「え?」





 海愛は突然名前を呼ばれ、不思議そうな顔をする。