莎奈匯が学校を休学して一か月。
その日は前触れもなく、突然訪れた。
「海愛、先に行くぞ!」
まだ辺りが薄暗い午前五時。携帯電話が鳴る。寝ぼけ眼で電話に出た僕は、告げられた内容に、持っていた携帯電話を落とした。
覚醒していく意識。冷や汗がどっと流れ、脈拍が早くなる。
『莎奈匯の母です。あの子に、アナタに連絡するように言われて……』
僕は制服を着て、家を飛び出した。
朝はできる限り海愛と登下校していた僕は彼女に今日は一緒に登下校できないことを謝る。すると海愛から予想外の答えが返ってきた。
「私も行く! 病院どこ?」
「○○病院」
僕は彼女の言葉に驚きながら答えた。海愛は学校を休んで一緒に莎奈匯の入院する病院に行くと言ったのだ。
僕は額から流れる汗を拭いながら、病院までの道を心拍数を上げ過ぎないように走った。
莎奈匯の笑顔が脳裏に浮かぶ。
泣きそうになるのを堪え、僕は唇を噛み締めた。