「蓮! お前またテスト一位だってさ! 普段どうやって勉強してるんだよ」
「真面目に授業を受けてるだけだよ」
「やっぱり頭の中身が違うのかぁ」
高校三年生になり、早くも一学期の期末テストの時期を迎えていた。
廊下に貼り出された成績表には人だかりができている。その一番上に記される名前はいつも同じ。
櫻井さくらい蓮れん。それが僕の名前。
僕はこの世に生を受けてから現在まで死と隣り合わせの人生を歩んでいる。生まれつき心臓と体の免疫力が弱く、当初は十歳の誕生日を迎えることも難しいと言われていた。
それが今や十七歳。医師から新たに告げられた命の期限は「二十歳」だった。
医学の進歩のおかげで時折ときおり訪れる発作を除けば、同学年の生徒と変わりない生活が送れる。
それでも僕は未来もなく、ただ死を待つだけの自分の人生が、虚しく、ちっぽけなもののように思えた。
僕は入学する時、学校側から条件を出されていた。それは成績を常に上位で取り続けること。条件をクリアする代わり、僕には自由に授業を抜けて帰宅する権限が与えられていた。
もちろん特例。いつ発作が起きるか分からない僕を最悪の結果にさせないため、病気のことを他の生徒に隠してほしいという僕本人の意思を尊重しての配慮だった。
僕は特別なんだ。
そんな考えが、僕と周りの人間との溝をさらに深めていた。