人ならざる『魔』と人間とが、相いまみえるそんな時刻。

闇に蠢く異界のモノたちが、こちらへおいでと、生者を手招く。

『逢う魔が時』

――こういう、昼と夜の狭間の時間帯を、昔の人はそう呼び恐れたのだという。

「ううっ……、変なこと思い出しちゃった」
アイツの影響だ。


ホラーが大好きな、親友の美智(みち)

怖いモノは大の苦手なのに、知らず知らずのうちに、美智から色々な情報がインプットされてしまう。

そして、1人になった時に思い出して、怖くなるのだ。

ぶるる。

再び、身を震わせると、綾はそそくさと歩き出した。

いつもなら2人1組でやる図書委員の貸し出し当番が、もう一人が病欠で、今日は1人でやる羽目になってしまった。

そんな時に限って、整理する本が多かったり、いつもは手伝ってくれる友達に用事があったりするのだ。

「美智め、薄情なやつだ。女の友情より、男を取るなんて……」

思わず、愚痴が口を突いて出る。

いつもなら美智が、『どうせ一緒に帰るんだから』と、図書当番を手伝ってくれていた。

でも、今日は違ったのだ。

「ゴメンっ綾っ! 今日は、先帰るねっ!」

両手を合わせて、上目使いに謝る美智の表情は妙に明るかった。

綾は、すぐに『ぴーん』と来た。