良平は、静かに目を閉じる。

綾の姿を、その瞼に焼き付けるように。

その声を、言葉を、心に刻み付けるように。

『ありがとう、良平……。私、あなたが、大好きだったよ』

「俺も……、綾が、大好きだったよ」

良平の呟きに答える少女は、もうここには居ない。

君は、迷わず、天国に行けたのだろうか。

「綾、別れの曲を君に――」

淡い月明かりの中、人気の無い音楽室から聞こえる、優しいリフレイン。

それは、天空へと登って行く少女の魂に、確かに届いていた――。




     ―了―