主人は、離婚を承諾してくれませんでした。

かと言って、世間に結婚の事実を公表もしてくれませんでした。

テレビで主人を見かけるたびに、私の胸につらさや苦しさ、そして寂しさが広がるようになりました。

私は、東サダオの妻のはずなのに…。

なのにあの人は、独身だと世間にウソをついている…。

こんなはずじゃなかったはずなのに…。

私は、あの人の何なの…。

自分の思いをテレビの前にいる主人に伝えられないことが、悔しくて仕方がありませんでした。


あの日の夜――その日は、私と主人が出会った日でした。

私は主人のマンションを訪ねて、離婚をお願いしました。

主人は承諾してくれませんでした。

私はカッとなって、下駄箱のうえに置いてあったガラスの花瓶を手にとって…主人の頭を殴りました。