「実は、以前東さんに親切にしてもらったことがありまして…」

とっさに思いついたウソを田村に言った。

「ああ、そうだったんですか。

失礼しました」

田村はまた頭を下げた。

とっさについたウソがバレなくてよかったと、宗助はホッと胸をなで下ろした。

「東さん、すごく優しい方だったのに…」

そう呟いた宗助に、
「優しくなんかないですよ、あの方は」

田村が毒づくように呟いた。

(ひっかかった!)

宗助は心の中でガッツポーズをした。

「えっ?」

そう聞き返した宗助に、
「あの、ちょっと…」

田村は宗助を連行するようにその場から立ち去った。