「どうかした?

もしかして、気に入らなかった?」

そう聞いた宗助に、夏々子は首を横に振った。

うつむくように目を伏せると、
「――違うの…」
と、小さな声で呟いた。

「えっ?」

訳がわからなくて聞き返した宗助に、
「あたしの誕生日は、2月14日よ…」

夏々子が呟くように言った。

2月14日――バレンタインデーのその日は自分たちが初めて会った日である。

「あたしはソウちゃんに出会って、名前をつけてもらって…」

夏々子がブツブツと呟くように言った。