* * *

初めての夏々子の誕生日の時だった。

「なっちゃん」

レコードから流れている洋楽を聞いていた夏々子に、宗助は声をかけた。

彼女が振り向いた瞬間、
「はい」

宗助はひまわりの花束を差し出した。

「えっ?」

首を傾げた夏々子に、
「誕生日おめでとう」

宗助は言った。

「誕生日?」

そう聞き返した夏々子に、
「6月14日はなっちゃんの誕生日だろ?」

宗助は答えた。

夏々子は宗助の手から花束を受け取ろうとしなかった。