サポートドラマーの仕事が終わった。

「お疲れ様でーす」

「桑田ちゃん、またよろしくお願いねー」

事務所関係者にあいさつを済ませたので、ライブハウスを出ようとした時だった。

「ちょっと君」

その声に視線を向けると、スーツ姿の男だった。

オールバックの髪に、たった今発したテナーの渋い声が印象的だった。

これが、ベイビー・スターダストのベーシスト・玉井宗助との出会いだった。

「はい、何でしょうか?」

そう聞いた桑田に、
「もしよかったらだけど、少しだけ時間をいただけないかな?」

そう言った宗助に、
「ええ、いいですよ」

桑田は首を縦に振ってうなずいた。