あの頃が1番楽しかったなと、桑田は振り返る。

バンドの腕前を初めて披露した文化祭で、隣のクラスのバンドに負けたこと。

当時大好きだったバンド、BIRDMENのライブに足しげく通ったこと。

なけなしのおこづかいをはたいて彼らのCDを初回限定盤と通常盤の2つを必ず購入したこと。

BIRDMENのベーシスト・徳重利明の髪型――現在は頭髪を固めたオールバックだが、当時はモヒカンヘアーだった――をマネしたら、学校からこっぴどく叱られたこと。

それまではオープンハンドスタイル(両手が交差しない状態でドラムセットをたたく演奏形態)でドラムをたたいていたが、ある日ドラムの基本の演奏形態はクロスハンドスタイル(両手を交差させた状態でドラムセットをたたく演奏形態)だと言うことを知って驚いたこと。

いろいろあった高校生活だが、それなりに楽しかった。

高校卒業後は地元の大学に進学して、軽音楽部のサークルに入った。

仲間たちとバンドを組んで、そこでも桑田はドラムを担当していた。

勉強とサークル活動、ガソリンスタンドのバイトをしながら日々を過ごしていたある日、転機が訪れた。

桑田が大学2年生の時だった。