ギタリストになるためには東京へ行くことだと思ったのは、瑛太が中学校に入学してからのことだった。

参考書を買うために入った本屋で目についた音楽雑誌を読んだことがきっかけだった。

(東京へ行けば、ギタリストになれるのかな?)

雑誌に掲載されているバンドのインタビュー記事を見ながら、瑛太は思った。

晩ご飯を食べて自室に戻ると、初めて買ったCDを手に取った。

「――東京って、どんなところなんだろうな…?」

自分が生まれ育った町しか、瑛太は知らない。

この町で高校、大学へと進学して、この町で就職して、この町で結婚して、この町で人生を終える――そう考えたとたん、瑛太は虚しくなった。

この町で当たり前の人生を送ることよりも、東京と言う場所でギタリストの夢を叶えたい。

今は義務教育の真っただ中だから東京へ行くことはかなわないけど、
「卒業したら行けるかも知れない」

瑛太は呟いた後、CDを胸に抱きしめた。