「ハハ、俺もなめられたものだな」

真木がコートのポケットに手を入れた。

宗助が真木に歩み寄ってきたので、真木も宗助に向かって歩み寄った。

1歩1歩と、2人の距離が縮まって行く。

もう少しだ。

後少しだ。

これは、時間と距離が大切だ。

どっちか1つをムダにしてしまったら、自分が今までやってきたことがムダになる。

心臓がドキドキと早鐘を打ち始めた。

真木に近づくまで後少し…と言うところで、真木が足を止めた。

「おい、何で誰も出てこねーんだ?」

そう言って真木は首を動かして周りを見回した。

「はっ?」

一体何の話をしているんだ?

真木の様子に、宗助は訳がわからなかった。