「そう急かすな、すぐに話す」

浮橋は笑いながら答えた。

「彼は逃亡しながら義賊の活動を続けた。

その中で彼はある女性に出会った。

彼は結婚して、彼女との間に1人の男の子を授かった。

その男の子が宗助だ。

結婚して我が子が生まれて幸せ…のはずだったけど、彼女が仲間たちの手によって殺害されてしまった。

妻の亡骸を抱きしめながら、彼は思った。

このままだと、せっかく生まれた我が子も殺害されてしまう可能性がある――そう思って彼は、生まれたばかりの宗助を養護施設の赤ちゃんポストに預けたんだ」

浮橋の口から淡々と語られる物語に、夏々子と瑛太と桑田は静かに耳を傾けていた。

「ああ、ちなみに宗助の“玉井”と言う名字は母親の旧姓なんだ。

まだ赤ん坊だったあいつの手に、“玉井宗助”と言う名前が書かれた半紙が握られていたんだってさ。

だからあいつは無戸籍者にならなくて済んだんだ。

戸籍のことに関しては…夏々子お嬢、あんたがよく知ってるはずだ」

浮橋が夏々子に視線を向けた。