宗助は窓の外に広がっている街を見下ろした。

「動き始めたか…」

先ほどの彼の言葉をマネするように、宗助は呟いた。

頭の中に、20代だった頃の記憶がフラッシュバックする。

気を落ちつかせるように、宗助は深呼吸をした。

「玉井くん」

ガチャッと開いたドアと自分の名前を呼んだその声に視線を向けると、
「荒畑さん…」

荒畑だった。

「デパ地下で美味しそうなバウムクーヘンを見つけてきたんだ。

一緒に食べない?」

そう言った後、荒畑はテーブルのうえに紙袋を置いた。

荒畑がソファーに腰を下ろしたのと同時に、
「本当は、違う理由でここを訪れたのではないんですか?」

宗助が言った。